DX2023白書

DX白書から見えてくる10のポイント
ここから『DX白書 2023』のポイントを見ていきましょう。
300ページ以上もあるレポートの内容を、すべてをカバーすることはできませんが「最低限これだけ知っておきたい10ポイント」にまとめてみました。
※DXなび ~初心者から目指すDX人材~ https://d-transform-navi.com/ より転載・引用。
ポイント1:大企業ほど先行するDX
1つめのポイントは、売上が大きく、従業員数が多い会社ほどDXへの取り組みが進んでいることです。
ポイント2.業界ごとに取り組み状況に大きな差あり
2つ目のポイントは、DXの進捗には業界によってかなり差があるということです。
情報・サービズ業では広くDXが進む一方で、教育や建設、医療福祉などの業界ではDXへの取り組みが遅れていることが明らかになりました。
IPAはDXが進むポイントを「3つ」挙げて分析しています。
1. 産業とデジタルの関係
ハード・ソフトを問わずデジタルツールを”商品”として扱う業界はDXの進捗も早い
2. 利益率
農林水産業や建設業などは業界として利益率が低く、稼げていない=IT投資に回せるお金が少ないという“負のスパイラル”に陥る会社が多い
3. デジタル化の歴史
海外から強力な黒船が上陸してきたなどの外部要因によって、業界全体が強制的にデジタルシフトしたケースもある
ポイント3|DX先進地は東京
地域別でみると「DXに取り組めている」と回答した企業が最も多かった地域は「東京23区」でした。
最近は「地方からDXの波が起きている」ことを強調するニュースもたくさん見かけますが、それは一部のケースで実態は逆でしたね。
東京23区の企業ほどDXが進む理由としては次の2つです。

・そもそもIT系人材が多い
・先進的企業が近くにある

ただし、地方都市でもまったくDX事例が存在しないワケではありません。
デジタル技術を使った変革は各地で起きています。
・北海道:農業機械の予約管理をデジタル化
・甲信越地域:ドローンを使った森林調査など
ポイント4.成果を実感できない日本企業
「全社戦略に基づいてDXを推進している」と回答した企業の割合は、アメリカが68.1%に対して日本は54.2%となりました。
日本企業のDXへの取り組みはアメリカと比較すると10%以上負けていますが、2021年と比べると伸びています。
深刻なのは「DXの成果が出ている」と実感している企業の割合です。
日本が58%に対してアメリカは89%となり、DXに取り組んでいるけれど成果が出ていない日本企業が多いことが浮き彫りになりました。
ポイント5.経営者の理解度は悲惨
DXでなかなか成果が上がらない大きな理由が経営層の「無理解」です。

上の調査結果が示すように、日本企業の経営層はITに対する理解が驚くほど足りません。

紙とハンコ、長時間労働、年功序列な昭和スタイルにどっぷりつかってしまった日本の経営者は、デジタルを使ってスマートに業務を効率化することを「邪道」とでも考えているのでしょうか?
ポイント6.危機意識が薄い社員たち
日本企業のDXが進まない原因は経営層ばかりではありません。
従業員の危機意識についても、日米で大きな違いがあるようです。
白書によると「日本企業の従業員たちは、リスクに対する感度が低い」そんな結果が出ています。
これらリスクをきちんと対応しているか?について調査したところ、どの項目でも日本企業はアメリカの半分以下という残念な結果になりました
ポイント7.新技術に対する関心の低さ
最新の技術をビジネスに取り入れるスピードにも、日米には大きな差があります
例えばAI(人工知能)を全社的または部分的に活用している企業は、アメリカでは40%に対し日本では22%にすぎません
AIはこれまで人の脳では追いつかなかった複雑な処理を一瞬で片づけてくれるすごい技術です。
それなのに日本企業の足取りは重いままです。
この記事を書いている段階(23年3月)で話題になっているChatGPTも恐らくすぐに使い始めるアメリカ企業と、とりあえず様子を見る日本企業に“2極化”するのではと予想しています。
ポイント8.人材育成にも難あり?
ただし、アメリカは日本よりも少しだけ
・個人事業主との契約や
・リファラル採用(従業員の友人や知人の紹介)
の割合が高く、あらゆるツールを使って人材を確保しているのが分かります。
また、DX人材を育成する方法も日米で異なるようです。
育成手段にOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を活用しているアメリカは6割以上。
つまり「とりあえずやってみなはれ」スタイルで従業員に経験をつませるのがアメリカ流です。
一方で日本企業の育成方法も、1位は「社内研修(OJT)」ですが実施割合はアメリカの半分以下です。
ポイント9 求める人材像を明確にすべし!
日本企業のDXを進めるヒント、ひとつ目は「求めるIT人材像を明確にすること」です。
今回の調査ではIT系の人材が「大幅に不足している」または「やや不足している」と答えた会社は8割を超えました。
つまり、人が足りないと悩む以前に、どんな人が欲しいかを分かっていない状態です。
そりゃ人を増やそうと思っても増やせないよ…。
ちなみに採用だけでなく人事評価の基準もありません(IT人材に対する人事評価の基準を策定している企業は12%程度・基準なしは79%)
ポイント10 厄介者|レガシーシステム
※レガシーシステムとは
レガシーシステムとは、過去の技術や仕組みで構築されているシステムを指す用語です。1980年代に多くの企業が導入した、メインフレームやそれを小型化したオフコン(オフィスコンピューター)と呼ばれるコンピューターを使ったシステムを主にレガシーシステムと呼びます。

メインフレームは独自OSで稼働するほか、アプリケーションソフトウェアはCOBOLなどの言語を使い、自社の業務に合わせて独自に開発することが一般的です。
アプリケーションソフトウェアの改修が必要になった場合は、自社、あるいは外部のシステムインテグレーターなどに依頼して対応することになりますが、メインフレームの技術に精通した技術者は高齢化が進んでおり、人材不足が大きな課題となっています。

1990年代後半から2000年代に入ると、仕様が標準化または公開されている技術を用いたオープン系などと呼ばれるシステムに多くの企業が移行します。
ただ、この時期に開発されたオープン系システムであっても、すでに最新の技術に対応することが難しいことから、レガシーシステムと呼ばれることがあります。

2018年に経済産業省が公表した文書である「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」では、約8割の企業がいまだにレガシーシステムを抱えているとした上で、「IT人材が不足する中、レガシーシステムの保守・運用にIT・ソフトウェア人材が割かれており、貴重な『IT人材資源』の“浪費”につながっている」と指摘しています。
DX白書2023